Unlock

厳しい、かなり厳しい。

永遠に同じ場所をグルグル回り続けている。

解答は既に手にしているはずなのだが「解答を手にしている」ということ自体が「いつでも解けるので今動く必要がない」という足枷になっている。

解答を手に出来ないほどの愚かさか、解答をすぐに行動へと変換できるフットワークが欲しい。

本当にこればかりは気持ちの問題なのでどうしようもない、助けてくれエチゾラム

 

残業後、行きつけのラーメン屋で流れていたBUMPの天体観測を聞き、激エモくなって帰宅しプラチナスターズの特典タペストリーを眺めながら「自殺したアイツも部屋にアイマスタペストリー貼ってたなあ…」なんてことを考え続けていたら1日が終わった。

タペストリー上の天海春香はいつも同じ笑顔で、いつも同じ輝きを放っている。

彼女たちは、例えこの部屋で俺が首を吊ろうとも、同じ笑顔で、同じ輝きで、劣化することなく、この部屋を照らし続けるのだろう。

その残酷で永遠で超然な無機質は、死そのものだ。

といった感じでファッション鬱病思考をこじらせていたら、唐突な目眩が訪れた。

 

まず訪れたのは全身を包む熱気、続いて耳にはノイズじみた波の音、そして最後に開けてゆく視界に投影される果てまで続く蒼。

「海じゃん…?」

そうだ、俺は今なぜか沿岸の道路の上に立っている。

俺は真上で輝く真夏の太陽と、足元の熱されたアスファルトからのダブル熱射から逃れられようと、目の前の堤防を登った。

腰ほどの高さの堤防を乗り越えた先には白い砂浜が広がり、更にその先は真っ青な海が広がっている。

「海だよなあ…?」

前方はどう見ても海なので、どうしようもなく後方を振り返る。

小中学生くらいの背丈の少女と目が合う。

「ぁ……」

少女は虫が囀るような小さな悲鳴を上げ、その場で縮こまった。

「黒澤ルビィちゃんじゃん!?」

俺は雄叫びを上げる、何故ならば彼女は黒澤ルビィだからだ。

ウエストにリボンの意匠を施した白色のワンピースとつば広の真っ白な帽子が大変処女性を主張しており大変可愛らしい。

これは俺の知っている黒澤ルビィの理想像と完全に一致する。

つまり、最高ってワケだ。

「俺はオタクだから詳しい!?どうやらこれが異世界転生ってやつらしいぜ!?」

最高なので思わず叫ぶ。

「人生に完全勝利しちまった……!後はどうやって適当に暮らしてもラブライブ!サンシャイン!!のモブ程度になれる………!」

さらに叫ぶ。

「そうだ、とりあえず目の前の黒澤ルビィを犯そう!何故ならば俺はアニメキャラとえっちなことがしたいから!!!!」

「アニメの世界に人権はない!!!」

「チンポが立てばそれで勝ち!!!後は無理矢理ビーチの岩陰などに連れ込み犯すだけだ!?」

さらに叫ぶ。

「アニメとかいうの簡単すぎるな!?!?」

そして叫ぶ叫ぶ叫ぶ叫ぶ、俺は叫ぶ、何故ならば異世界転生を果たした俺は世界の外側の存在であるので倫理的な振る舞いをする必要がないからである。

俺は倫理から解き放たれ一匹の"獣"と化し、全力で黒澤ルビィを捕獲しようと飛びかかる。

黒澤ルビィは全力で俺から逃げるが関係ない。

俺は23歳の男だ、女子高生如きにかけっこで負ける道理がない。

なんなら異世界転生とかしたし特殊能力とか使える。

試してないが多分出来る。

「クハハハ!!!!ほらな!!!!」

黒澤ルビィを”捉える”という気持ちを雑に右手に込めるだけで容易くそれは達成された。

「ぴぎゃっ!」

黒澤ルビィは動画を一時停止をしたかのように、全力疾走の格好のまま、宙に停止した。

「ああ…脳が蕩けそうなこのボイス…たまんねえよなあ…黒澤ルビィ………?」

小動物の断末魔のようなその悲鳴が俺を更に昂ぶらせる、俺は無敵だ。

「これから黒澤ルビィちゃんにえっちなことをします。何故ならば俺は無敵なので」

激キッショい醜悪オタクスマイルに黒澤ルビィも思わず泣き出す、とても可愛いしえっちだ。

俺はまず黒澤ルビィの髪の毛に触れようと思った、俺はモテる男だから詳しいが女の子はナデナデされるのに弱いので撫でれば一発で俺のことを好きになり、おちんぽが欲しくてたまらなくなるからだ、Yesロジカルシンキング

だが、黒澤ルビィに触れようとしたその瞬間、また目眩がやってきた。

「マジかよ………もうおしまいかよ…”足りなかった”か……?」

 

……

………

机に散乱する飲みかけの薬たち、雑多に積み上げられた漫画たち、やかましくVOCALOIDのPVを再生し続けるYOUTUBE、無音で劇場版ラブライブをリピートし続けるPS4、そしてプラチナスターズの特典タペストリー。

間違いなく俺の家だ。ソファで寝てたらしい。

そして、酷い夢を見ていたっぽい。

夢には深層意識が影響すると言われているが、俺にはノストラダスの予言を読み解くが如く雑に夢をこじつける程度の分析しかできない。

しかし現代のフロイトであるところの俺が「今の俺には黒澤ルビィちゃんとイチャイチャしてえ」という真相意識がありますと決めつけてくれたので「そうにゃんか〜」って言った。散文的に笑いながら。

 

明日は金曜日、その次はラブライブ!サンシャイン!!、やっていくだけだ。

タペストリーの中の死にはまだ遠い、ならばやっていくしかない。

やっていくしか、ないんだよ………

もう何もかもがめちゃくちゃだ………