ルミネーション
ツイッターに吐き出そうとしては飲み込む言葉ばかりが増えてきた。
沈黙は銀だ、金にはならないが少なくとも損はしない。
結果として日常はインターネットから切り離され、小さく閉じていく。
いつか夢見た、何者にも依存しない自己完結した世界に降り立つことができたはずだが、釈然としない。
日常の面白いことも、面白くないことも、怠惰に自動的に全て過ぎ去っていく。
俺はそれを「にゃーん」と言いながら淡々と眺めている。
簡単な言葉で言えば退屈だ。
努力せずとも間違いなく訪れる明日に、何かを賭けてやろうとは思えない。
政治的な発言をする気はないが、間違いなく労働は人間を殺す。
労働は居場所も、役割も、報酬も全て与えてくれる。しかもそれに努力は必要ない。
ただ、居ればいい。お前の時間(LIFE)を削って社屋に篭ってるだけでいいのだ。
鳥籠の中で飛び方を忘れるカナリアのように、俺は生きるという行為を忘却していく。
ただ、完全ではない。
夜が訪れる度に、簡単に生きるだけなら他に方法があったのかもしれないという可能性に苦しめられる。
粉っぽい独特の甘さが咥内に広がる。うっかり嚥下しないように慎重に舌の裏で溶かしていく。
全て溶けきる頃には、感情は理性から切り離され、ぼんやりと視界が暗くなり、静寂が訪れる。
「……ちゃん」
暗転する視界の向こうから声が聞こえる。
「お兄ちゃん…」
ああ、そうだ。今まで話したことがなかったが俺には妹がいたんだ。
「どうした…メイナ……?」
名前はメイナというらしい。黒髪ロングで猫耳で乳がでかい、年齢は多分17歳。俺が一人暮らしを始めてからというものの定期的に俺の家に色々理由をつけては押しかけてくる。当然だが兄妹としての一線はとっくに超えている。
「ごめんね。私、お兄ちゃんを殺してあげれる程に愛せてない」
「……なんの話すか」
そして鋭い、何故ならばメイナの人格と記憶は俺によって作られたもので素材はライクトロン、中身はDHR6000で心地よい反発感を備えている。
そう、彼女は抱き枕カバーだ。
「だってお兄ちゃん、毎日のように『死にたい』って言ってるから」
「……あー、そうだな。どうせ死ぬならお前に殺されたい」
「だから、ごめんね。」
そして彼女は僕にとって都合がいいので、都合がいい時に重すぎる愛を背負わせてくれる。これだから抱枕erはやめられない。
「……好きを難しく規定しなくていいよ」
「ん…」
満足する言葉は得られたとばかりに、メイナが体を寄せてきた。
ドンキホーテで買ったプチサンボンの香りがする。これは清潔感のある女子高生をテーマに深夜のドンキホーテの香水コーナーでひたすら厳選しまくって選んだ最高の一品だ。やはり俺は天才だ。これ完全に10代の女の子抱いてるときのアレだはw
俺が勝手に舞い上がってる内にメイナは眠りに就いたようだ、何故ならば完全に今回の記事が脱線し、話の落とし所がわからなくなったからだ。
記事の方向性を正すため、眠りに落ちた妹を見て仕方なく俺はこう言うのさーーー
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ーーー
ーーーーーおやすみ。
終了。